1 姉と妹の狩猟会

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 感謝は嘘ではない。  だが真実でもない。 (ごめんなさい──わたしがこの家に生まれてしまって、お姉さまの妹になってしまってごめんなさい──)  本当はそう謝りたかった。  だがきっとヴァレリアはそんな謝罪を卑屈と思い、幻滅するだろう。  どれだけ謝ろうと、リダがキャシアス侯爵家に生まれたことも、ヴァレリアの妹であることも変えられない。  だからリダは謝らなかった。  ヴァレリアへの感謝の証として、せめて少しでも「かわいい妹」に近づけるように。 「わたし、お姉さまがお姉さまで本当によかった」    ヴァレリアは微笑み、さらに強く手を握りしめてくれた。  リダもそれに応えてもっと笑った。  無理をしているせいで、血の気どころか意識が遠のいていく気がした。  そのとき、狩猟開始を告げる太鼓が鳴った。 「リダ、ちょっとだけ待っていてね。──わたしのかわいい妹に、誰にも何も言わせないわ」  決意を込めた笑みとともに、ヴァレリアは身を乗り出してリダを抱きしめた。  そしてさっと馬を森へと駆った。 (お姉さまが自分をみんなに認めさせて、こんな妹への悪口を封じようとしてくださっていても……)  (もや)がかかったような頭が鈍く痛み、ますます具合が悪くなってくる。  乱れる息をリダが懸命に整えようとしたとき、深い森の木々の合間に光と影とが交錯した。  感嘆の声があがる。  ──これが聖女の力か!
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