1 姉と妹の狩猟会

8/8

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
 リダも息を呑む。  光と影の幻想的な舞踏のただなかに、髪をなびかせてヴァレリアがいる。  しなやかに伸びた腕のままに光と影が踊り、森の奥から鋼狼を追い立てる。  巨躯もむなしく逃げ惑う鋼狼が逃げ場を失い、苦し紛れに宙へと飛びあがったところを、ヴァレリアが放った光の矢が貫いた。  見とれていた貴族たちのあいだに、一斉に感嘆の声があがる。  大好きな姉なのに、こうもどうしようもない格差を見せつけられて胸が苦しい。  リダの心も体ももう限界だった。 「──降りて休むわ」  リダは馬の口を取る従者と付き添いの侍女に声をかけた。  だが彼らもヴァレリアの魔力にすっかり心を奪われて、リダの声などまったく聞こえていないようだった。 (いつものこと……)  リダはひとりふらふらと歩き出した。  木々のあいだに、座り心地のよさそうななめらかな平石があった。  リダは吸い寄せられるように、そこに体を投げ出した。 「──きみ」  知らない声に呼ばれた気がしたが、まさか自分に関心を向ける者がいるとは思えない。  そもそも体からは力が抜けて何もできない。したくない。  リダは静かに目を閉じた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加