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◆
「まさか宣言通りになるなんて……」
――――二週間後。
竹本家の使用人たちにパジャマを引き剥がされ、真新しいスーツを着せられた結花は、あれよあれよと言う間に、家から送り出されトボトボ歩いていた。
長年結花のことを猫可愛がりしていたお手伝いたちは、新たな門出を祝福し大賑わい。
結花の戸惑いや不安など聞いてもらえる状況では無かった。
緩くパーマのかかったダークブラウンの髪をひとつに結び、
一郎が準備していった、センスの悪すぎる高級スーツとバッグ、
そしてパンプスを着せられた彼女は、緑豊かな閑静な住宅街の洗練された歩道を歩く。
タレ目がちの大きな目。低くも高くもない鼻。ぷっくりした唇。童顔だと言われる顔と百四十八センチの小柄な身長は、とても会社勤めをするようには見えない。
行き先はうちから徒歩圏内にある自社ビルを構える――『T&Y化粧品』
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