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結花に激突された男は前につんのめるような形で押し出され、
転びそうになったところをどうにか耐えた。
玉突き事故ニ件の発生だ。
酔っ払いは、すぐさま変な歌を歌いながら去ってゆき、責任は全て結花に降り掛かった。
――――え、ちょっとオジサン……!?
「す、すみません!お怪我はありませんでしたか?!」
しかし、こうなってしまえば、仕方ない。
ひとまず結花は、すぐさま回り込んで、気遣った。
理由を話して正直に謝ろう。やったことに変わりはないのだから。
そう思って、男の顔を覗き込んで、はっと息を呑む。
まるで時間が止まったようだった。
どこか鋭いのに切れ長の澄んだ瞳。
高く通った鼻梁に、薄い桃色の唇。
黒髪が額を横に流れて、襟足までワックスで撫でつけるように固められている。
冷たい印象なのに、テレビでよく見るイケメン俳優と比べても遜色ない飛び抜けた美貌を持っていた。
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