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目元を押さえている大きな手が気になるところだが、結花は初めて会うその男に見惚れた。
――――素敵な男性……
だが、数秒後。
「きちんと前を見て歩いて下さい。怪我をするところです」
返ってきたのは、ものすごく素っ気なく冷ややかな口調。
結花は、ハッと我に返る。
しまった。
「すみません、すみません! 本当にすみませんでした……! お怪我はありませんか……!?」
だが男は謝罪する結花を見ることなく、地面に目を配っていた。
つられた彼女も頭を下げ、周囲を見回す。
「あの、もしかして……何か落とされましたか?」
大事なものだったらどうしよう。
結花がひやりと背筋を震わせた三秒後、
男は動きを止めて、静かに結花の足元を指摘した。
「……足元を、見てください……」
「はい?………ひぇぇぇーーーー!?」
彼女のパンプスの下には、眼鏡があった。
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