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子どものように地団駄を踏んで怒る一郎の姿に、自室のソファに腰おろした結花は、肩を竦め首を傾げる。
「だって仕方無いよ。私、お相手の吉木社長のどんな会社でどんな店舗をやってるのか知らないのも本当だし。ひとりでショッピングだってろくに行ったことがなかったもの」
自分の過保護っぷりを思い出し、グッと黙るしかない、一郎。
「友達だっていないし、恋だってしたこと無いし。和也さんは素敵だなぁと思ったけど、吉木社長があんなに怒るとは思わなかったなぁ」
吉木和也――とは、説明するまでもなく、本日の見合い相手だった。
見目麗しい大事な一人息子の結婚相手を観察すべく、結花は取引先の威厳あふれる吉木社長から、終始質問責めにあった。
ご趣味は? と言った、定番の質問から始まり、
『身体を動かすことは?』
『家事は得意ですかな?』
『結花さんは、我が社のブランドを使用されたことは?』
『……我が社の印象は?』
などなど、まるで吉木社長のほうと見合いをしているような、雰囲気だった。
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