プロローグ 破談の見合い

7/19
前へ
/20ページ
次へ
 結花はその質問のどれにも 『父にさせてもらえたことがない』と、真正直に過保護の様を打ち明けつつ。  企業の話しに関しても、心苦しくなりながら知り得ないことを告白した。  まぁ、それが、暗雲の始まりだった。  そもそも結花は、幼い頃から適齢期を迎えたら、父の見初めた相手と結婚すること約束していた。    そのことに関して何の抵抗もない結花は、相手を権力や肩書きなどの色眼鏡で見ないためにも、当日はなんの情報も仕入れずに見合い出席した。   (だって、一生を共にする人だもん、きちんとその人自身を見たいし……)  本人なりに理由はあれども、これは百パーセント彼女が悪い。  自社を知らない無礼極まりない結花にぷりぷり怒りだし、  世間の波から外れた結花を批判し始めた吉木社長は、気を収めるために、お手洗いへ向かおうとした。  だが、さらなる悲劇はここで起きた。  春のそよ風に乗って、窓から桜の花びらがひらりと舞って、吉木社長の頭のてっぺんに乗ってしまった……。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

557人が本棚に入れています
本棚に追加