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結花はその質問のどれにも
『父にさせてもらえたことがない』と、真正直に過保護の様を打ち明けつつ。
企業の話しに関しても、心苦しくなりながら知り得ないことを告白した。
まぁ、それが、暗雲の始まりだった。
そもそも結花は、幼い頃から適齢期を迎えたら、父の見初めた相手と結婚すること約束していた。
そのことに関して何の抵抗もない結花は、相手を権力や肩書きなどの色眼鏡で見ないためにも、当日はなんの情報も仕入れずに見合い出席した。
(だって、一生を共にする人だもん、きちんとその人自身を見たいし……)
本人なりに理由はあれども、これは百パーセント彼女が悪い。
自社を知らない無礼極まりない結花にぷりぷり怒りだし、
世間の波から外れた結花を批判し始めた吉木社長は、気を収めるために、お手洗いへ向かおうとした。
だが、さらなる悲劇はここで起きた。
春のそよ風に乗って、窓から桜の花びらがひらりと舞って、吉木社長の頭のてっぺんに乗ってしまった……。
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