最恐悪神様の誤算愛

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 咲良が孤児であり、白桜会の有志による奨学金で学校に通っていること、神守家の人間だから援助しろと自分の父親――太一に訴えかけてきたなど嘘も織り交ぜ、咲良を貶め孤立させるように周りを扇動してきたのだ。  誤解を解きたくても、話を聞いてくれる人間はいない。同じ神守でも家が会社を興している和江の方が、ここでの信頼は厚かった。  そのうち、理解してもらおうと努力するのさえつらくなっていったが、全員ではなくても、誰かひとりでも歩み寄ってくれる人がいればと願い、咲良は学校に通い続けた。  それも、もう終わりだ。 「よかったじゃない。あなたみたいに身寄りがない子を息子の妻にしてもいいなんて岡林社長は懐が広いわね。息子さん、素敵な人よ。咲良にはもったいないくらい」  和江がやけに上機嫌なのが、気になる。咲良の幸せなど願うわけもなく、逆にそれほどひどい相手なのか。しかしそれ以上、考えられない。  頭がフラフラして声を出すのも面倒だ。どうやら手筈が整ったらしい。  和江と同じタクシーに乗って通い慣れた白桜学園のホールに向かう。男性陣はスーツが多い中、咲良のように着物姿だったりドレスを身にまとっていたりと女性陣は華やかだ。 「ちょっと顔色が悪いわよ。せっかくこんな場で結婚を発表できるんだから、しっかりしなさいよ」  ホールの入口前で和江がくるりと咲良の方へ振り返った。こんなときでも和江が心配するのは咲良の体調ではなく相手に与える印象だ。
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