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なにを彼女はここまで躍起になっているのか。この結婚がうまくいけば岡林不動産とつながりができて、父の会社にとって大きなプラスとなるからなのか。
和江の指摘に咲良は長く息を吐いたあと、背筋を伸ばして真っすぐに前を見据えた。
基本的に在校生は全員、出席だが去年は着ていく服もなかったため、咲良は欠席した。この白桜会に参加するのはおそらく最初で最後だ。
和江に続く形で会場に入る。先に来ていた太一は誰かと話している。一度だけ会ったことがあるが、彼が岡林氏なのだろう。
背が低く小太りで、頭頂部はやや寂しい。太一よりやや上だと聞いていたが、どう見ても一回り以上は離れている印象だ。
スーツを着ているというよりは、スーツに着られている。そして、その近くにいる岡林氏によく似た面影の若い男性が彼の息子なのだろう。
彼を見て、とくになんの感情も湧かない。一方で寒気は余計にひどくなっていくばかりだ。
そのとき開会が宣言され、皆の注目が壇上に集まる。挨拶は岡林氏が行うことになっていた。
挨拶を任されるほど、会社の規模は大きく咲良も名前を耳にしたことはある。しかし、あまり興味ない。
指名され、壇上で饒舌に白桜会の今年の代表として挨拶する岡林氏の話が一区切りついたときだった。
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