最恐悪神様の誤算愛

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「では、大事な開会の場を邪魔してすみません。彼女は連れて行きます」 「待てよ!」  踵を返そうとした浬に達也が叫ぶ。彼のそばには父親でもある岡林氏もいた。 「あんたも神守の家柄目当てなんだろう? そうでなかったら、こんな生まれも育ちもろくでもない女、選ぶわけがない。それとも、金持ちの憐れみか?」  自棄になったのか、一転して先ほどから達也の口調は乱暴なものになった。そこに父親も便乗する。 「そうだ。家柄だけは金では買えないからな。ようやく多額の援助と共に神守家とつながりを得られるところだったのに、邪魔をするな!」  体裁などあったものではない。浬は仰々しくため息をついた。 「なにを勘違いしているのか知りませんが、神守家に興味などありませんよ。他の人間では無意味なんです。咲良以外興味はありません」  浬は今度こそ咲良の肩を抱いてその場を離れようとしたが、逆に咲良が岡林親子に向き直る。 「こんな形になってごめんなさい。でも私は不幸でもかわいそうでもありません。だから同情して結婚していただかなくて結構です」  きっぱりと言い切った後、咲良は深々と頭を下げる。咲良の行動が意外だったのか、岡林氏も達也もすぐに言葉が続かなかった。  その隙に、達也が持っていた婚姻届を浬がひょいっと手に取る。 「あなたが愚かな人間で助かりました」  にこりと微笑んだあと、打って変わって浬は冷たい笑みを浮かべる。 「彼女は俺のものだ。誰にも渡さない」  壇上にいる岡林親子と和江はその氷のような声と眼差しに硬直する。咲良はなにも言わず、浬に促されるままその場を去った。
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