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ホテルに戻り、ベッドに座る麻有実と明彦。
自分の惨めさからか…なかなか、話せ出せずにいた。
「ねぇ、明彦…もう、そんな表情しないでよ。」
「そうは言っても…なぁ…。」
少し落ち込んでいた明彦に聞いてみる事にした。
「この5年…私がどんなに連絡を待ち望んでいたか?明彦の気持ちに迷いがあったのは分かってる。でも、私がハッキリ言える事は…5年前の明彦の言葉…それを見失わずにやってきたの。覚えてる?」
「…あぁ、覚えてるよ。」
麻有実は足を組んで明彦に問うてみた。
「…言ってみて。」
「…なんか、改めて言うとなると…恥ずかしさ…があるけどな。」
「良いから…言って。」
麻有実の真剣さに押されて、話し始めた。
「麻有実には、リーダーシップがある。上手く表現出来ないんだが、確かにあらゆる人を魅了させる何かが有る。学生時代は、とにかく…あの女踊りを見せつけられて。本当の麻有実…女踊りの麻有実を見た時に、俺は魅了された。」
「…それだけ?」
「最初にキスした時も覚えてる。綺麗に化粧をして、麻有実がこんなに綺麗になるとは…思って"あぁ、大切な存在なんだなと思ったよ。まだ若造の俺には当時は口に
出せなかった。」
ホテルに常備されていたミネラルウォーターの蓋を開けようとしている麻有実を見て、明彦が代わりにその蓋を開けてやった。
「ありがとう。」と麻有実良い口に含んだ
「これだけは分かって欲しい。5年の空白は埋められない。ただ、謝らなければいけなかった。まさか、こうして来てくれるなんて思っても居なかった。とっくに忘れ去られていて、相手にされないとさえ、思った。」
ミネラルウォーターを口にする含み、ゴクリと飲んだ麻有実。
「私は待った。何故、そうまで明彦に拘ってたなんて考えては、いなかった。私が明彦に言われた言葉…忘れてるかもしれないけど、大切な存在を…忘れない。今も昔も変わらない…。って…。5年の月日が流れて、そんな言葉は私は繋ぎとしての存在だったのか?自問自答を繰り返した。」
「闘病生活で2人で撮った昔をの写真を見ては、リハビリも頑張った。そして空港で麻有実を見た時、声を掛けようか…頭では迷った。
でも心の中で、取り戻したかった5年の歳月…そっちが勝った。」
「私も"じゃあ…来てみて確かめたら良い"ってメール…私の事なんか…忘れてるよって意味なんだ…と思った。」
空港の到着時の事を思い出させた。
「心の中では声を掛けなきゃ!と分かってても…頭で"今更、なんて声かたらいい?"と心と頭の中で葛藤していた。でも、このままじゃ、ダメだ!!その心の声で…麻有実に声を掛けた。平手打ちを喰らっても良いとさえ感じたよ。」
麻有実は明彦に顔を見た。
「私の中のケジメ…散々文句言って、忘れてやるって…でも、顔を見たら…言えなくなった。」
そう言うと、明彦隣で肩に頭を乗せた。
「私達は心の声に任せた。」麻有実がポツリと呟いた。
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