DISTANCE

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「今更なんだが…5年分の気持ちを言っても良いか?」 明彦の肩に頭を乗せていた麻有実が頭を起こし、明彦の顔を見た。 「5年分の気持ちを、どこまで埋められるのか?分からない。だけど、麻有実を大切にしたい。」 麻有実は少し微笑んで頷いた。 「分かった。だから…これからは一緒。良いよね?」 「あぁ。一緒に…行くよ。」 「でも、時々は検査を受けてよ。」 「分かってる。もう、あんな地獄は…ウンザリだからな。」 麻有実は明彦の手を取り握った。 「落ちる所まで落ちた。後は這い上がるだけだ。」 「私って…つくづく思う。明彦の事を忘れようとすると、身体の中で思考のケンカが始まる。結局、好きな気持ちは…変わらない。」 「なぁ?俺達って…くっついたり、離れたり…してたな?」 「そうだねぇ…でも、今回は…長かった…。」 麻有実のその言葉で大きく溜息をついた明彦。 「…死ななくて…良かった。こうしてまた、麻有実と居たかったからな。」 その言葉でまた、麻有実は明彦の肩に頭を乗せた。 「ねぇ…お腹空かない?」 「ちょっとだけ、空いたな…。」 「何か…食べに行こうか。」 「あまり、食えないけどな?」 「下のレストランで何か食べに行こうよ。」 「そうだな…。」 明彦は麻有実に軽くキスをした。そして、自身のヴィーナスの胸を触った。 その手を止める麻有実。 「あのね…目の前のヴィーナスはお腹がぺこぺこなの?」 「そうだったな?」 2人は1階のレストランへと向かった。 「そう言えば…飛行機のチケット…予約しないとだろ?」 「もうとっくにしてるわよ!」 「相変わらず、仕事が早いな?」 「運良く、隣が空いてたからそこを抑えた。」 「エコノミーで約1日のフライトかぁ…。」 「誰がエコノミーって言ったのよ?」 「違うのか?」 「私は最低でも、ビジネスクラスしか、乗らないの。」 「デキる女性は…違うなぁ…」 「まあねぇ!!」そう言ってVサインして見せた。 「あっ!!東…東には、なんて言うんだよ。」 「何年の付き合いだと思ってるの?優子とは。」 「…想定の範囲内…って事か…。」 「私が彼女を信頼出来るパートナーにしている意味が、分かるでしょう?」 エレベーターで1階のレストランへ向かった。 「…あんまり、食べれないけど、良いのか?」 「…明彦は軽くで良いよ。」 胃を半分、切除している以上、仕方のない事。 「お酒は?」 「それも…あまり飲めない。」 「軽くビールとおつまみ程度?」 「出来るだけ、野菜とか…健康的なモノだな。」 それでも麻有実は2人の時間を過ごせる事で、嬉しかった。
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