DISTANCE

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夜には夜の…時折、煌びやかな景色を一望していた。 《これで…待ってなかったら…少し現地を楽しんで帰ればいいか…なーんて》 期待と不安、半分...五分五分の気持ち。 右手の薬指のリングに、思いを馳せていた。 「5年…あっという間だったのか?それとも長かったのか?なんか…もう、わかんないや笑」 隣の席が空いていた為、独り言も多少は平気。 「この5年で…彼の目に映る私は、どう変わったのかな?逆に私の目に映る彼は…変わってしまったのか?」 前は10年一昔…と言われていたが、今や5年一昔と言った世相が背景にあった。 「5年後の麻有実がどんな風に変わってるか?見ものだね。」 そう書いていたメッセージに思い出し笑いをした時だった。 機内サービスが回ってきた。制限エリア内で買ったアイスアメリカーナも空になり、今度はホットコーヒーを頼んだ。 約1時間半のフライト…麻有実は5年前の写真をスマートフォンの中に何枚か残して、それを眺めていた。 「どうしよ…実は…明彦、結婚なんかしてたら…昔の彼女です。だなんて言ったら、奥さん…発狂するだろね?まぁ、連絡して来たんだから、それは無いだろうけど…。」 お互いが生まれたての状態で絡み合ってた時を思い出した。 「あの頃の2人を例えるなら…アダムとイヴ…聞こえは良いけど、単なる戯れに過ぎないもんね」 顔は笑ってはいるが、身体と心は彼に奪われていたままだった。 「別れる前に悩むのが女…別れて悩むのが男。」 どちらから別れを切り出したわけでもない。かと言って、これといった連絡も無いまま、逢いに行こうという無謀さ。 『2人の気持ちが変わらなければ…来たら良い。』 頼りのメッセージはそれだけだった。都合の良い言い訳と言われると、何も言い返せなかった。 「そういうところが律儀。男なんて、5年どころか5ヶ月で忘れてしまう生き物よ。」 優子の言葉に納得も出来た。 スマートフォンのメッセージ。5年ぶりのメッセージが "久しぶり!!元気でやっているか?" これだけの文面だけで、麻有実をナイトフライトに導く。 「バカな女だと思ってるでしょ?」と優子に言えば、 「バカを通り過ごして…まるで女子高生か!って感じよ」 嘲笑う優子の顔を思い出した。 【明彦が迷惑じゃなかったら…行くけど…どうする?】 【じゃあ…来てみて確かめたら良い】 最初は、なんなの!?相変わらず!!と呆れた筈の自身が向かってる。 健気な女を通り越してる…【じゃあ、来てみて…】をまともに受け取る女がここにいるなんて… 機内ヘッドレストのモニターが目的地の中間地点まで差し掛かっている表示を示していた。 「居なかったら…優子に電話しよ…。それで綺麗さっぱり、次の道を進もう。」 窓から見る景色は暗がりで分からないが、遥か遠くに同じ方面を飛ぶ飛行機。両翼端のランプが見えた。 別のNight birdもまた、誰かの期待を乗せているのか?麻有実自身もNight birdの一員であった。
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