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泣き疲れ…流す涙も出ないぐらいになった時、麻有実はようやく、明彦の死を受け入れた。胸元で組まれた両手を触ったり、唇にキスしたり…明彦に顔に自身の顔を寄せる事が出来た。
「…はぁ、私は優子が言ってた通り…弱い女だった…。」
「でも…今はちゃんと、妻の顔してる。」
「だって妻だもん 笑」
「よく言うわよ 笑 私が妻になってやろうか?って、言った時の…あの顔!! 笑」
「バカだった。あの時は怖さばかりで、受け入れられなかった…。」
「どうするぅ? 笑 離婚届…出す? 笑」
優子は茶化すぐらいに元気に…いや、嬉しかった。
「出さないわよ!! 笑 明彦は、永遠に私の夫。だって、まだ大好きだもん!!ね?明彦もでしょ? 笑」
今にも瞼を開けて…おはよう。ハニー…と、言いそうな穏やかな表情。
「神様って…なんでこんな試練を私に与えるのかな?」
「試練って…乗り越える為に与えられるんだって。」
「…私は…当分、乗り越えられそうに無いな…。」
その時、テーブルに置かれた…明彦のメッセージを思い出した。
"勇気を持って過去を忘れて…将来に希望を見出すこと"
「…勇気…ねぇ。」
そう言うと…明彦のバッグな中にあった、チケットの半券をバッグから取り出し、明彦の合わせられた両手に置いた。
「それは?」優子が麻有実に聞いた。
「私と一緒にフライトした時のチケットの半券。」
「えっ!今までの?全部?」
「そう!笑 裏にね、日記みたいな事を書いてた。 笑 明彦らしい…。」
「そっかぁ。嬉しかったんだね?五十嵐。」
「明彦…もう、1人で飛べるんでしょ?もう一度、私と一緒に回った場所、行って来て。ねっ?」
「麻有実…指輪…してあげなくて良いの?」
「しなくて良い。ほら、私と再会した格好のまま、旅立って行ったんだよ?《ダ・ヴィンチ》も《クロコアリゲーター》も…着ていたスーツも置いて行った。元の自分に戻ろうとしたかった…。私はそう思ってる。」
「だったら…このまま、送り出してあげようね。」
「あの世に行っても、指輪なんかあっても、どうして良いか…分からないんじゃない? 笑」
「それもそうね。 笑」
「あれでしょ…麻有実。五十嵐と毎晩の様に…。」
「それは、ノーコメント!! 笑」
「優子こそ、彼に連絡したの?」
「…あぁ、別れた。」
「えっ?ええっ!?なんで?」
「…他に女が居たのよ…笑 だから、私は…私も麻有実と一緒に、女同士で頑張る!!」
「なんでこう…私達って、男運が無いんだろうね? 笑」
「ホントそれ!!ここに良い女が2人居るっていうのに…皆んな、どっかに行っちゃう。バカバカしくなった。」
明彦に相応しい…葬儀…麻有実の後悔…それはもう、無かった。
抱き締められ触れた嬉しさ…それが1番良かった。
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