DISTANCE

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シートベルト着用サインが点灯した。 麻有実の乗る機体は着陸態勢に入る。空港の混み具合からなのか…何度か旋回するのが分かった。 【じゃあ…来てみて確かめたら良い】 空港で待っていてくれるの?どこに行けば会えるの? 【来てみてみたら…】麻有実には、その意味が分からなかった。 窓から見る滑走路の誘導灯がイルミネーションにも見えた。 徐々に近くなる滑走路。着地の瞬間、ちょっとした振動があり、エンジンの逆噴射音で減速を始めた。 「ふぅ…」溜息1つ…ついた 【21時25分のフライトで、そっちには…23時頃に到着する予定だけど…】 事前にメッセージをしていた。 【分かった】その一言のメッセージに、何故か、安心した。 昔と変わらぬ…短いメッセージが、しっくり来た。 麻有実を乗せた機体は誘導路を走行し、マーシャラーの待つゲート方面にゆっくりと向かっている。 シートベルト着用サインが点灯しているにも関わらず、既にシートベルトを外す乗客もいた。 機体が完全に停止し、機体の扉が開く。ビジネスクラスの麻有実は早目に到着口に向かう事が出来た。 まだこれから、目的地に向かうであろう人々。出迎える人々。空港のクルーなど、様々な人の中を掻き分け、キャリーバックの受け取りに向かって行った。 ターンテーブルに自身のキャリーバックが流れて来るのが見えた。 タグを外し…出口の自動ドアが開いた。プラカードに名前を書いて出迎える人。柵の向こうで出迎える人々の中に明彦の姿は…無かった。 出口を何歩か歩いて振り返る。やはり、明彦の姿は無かった。 【じゃあ…来てみて確かめたら良い】 その言葉は…そういう事だったんだ…。 「期待した私がバカだったんだねぇ…優子に大笑いされる...」 たった1時間半ほどのフライトだったが、麻有実の中に諦めきれない気持ちがあった。 とりあえず、予約していたホテルに向かう途中だった。 「お嬢さん…捜し人は、見つかりませんでしたか?」 「…えっ!?」 振り返った。見覚えのあるその顔は、5年前と少しも変わらなかった。 「いやね…こっちも捜し人が居るんだが、なかなか、気づいて貰えなくてね…」 そう言って…照れ笑いしていた男性。 麻有実は…はにかんだ表情で、ゆっくりとその男性の元に近寄る。 男性は腕組みをして笑みを浮かべて壁にもたれ掛かっていた。 安堵の気持ちは、その男性の肩に自分の額を置く事で表されていた。 「…久しぶり…だね。明彦。」 「そうだな…久しぶりだな。麻有実。」 抑えていた気持ちは抱き合うことで発散された。 「…逢いたかった…。」 「…俺もだ。」 2人はホテルに向かった。麻有実のキャリーバックを明彦が持って、空いた手は強く握られていた。
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