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駐車場までの横断歩道。麻有実の癖...それを見て、明彦が笑う。
「相変わらずだな?その歩き方は。」そう言って、笑いながら見ていた。
「もう何年もこの歩き方なんだから...仕方ないでしょ。」
明彦は麻有実のその歩き方を笑って見ていた。
「どう考えても、徳島出身だってバレバレだろ?」
そう言ってまた、笑った。
横断歩道の縦線に沿って、やや踵を上げて歩く独特の歩き方。
しかし、そんな麻有実の事が本当は好きだと、言えずにいた。
独特の歩き方…。
それを明彦が初めて見たのは、高校時代の体育での平均台の歩き方を見た時だった。徳島の阿波踊りの足の運び方...そのもの。
「朝比奈の阿波踊りが見れるぞ!」
周りも笑っていた。
麻有実は体育の平均台の授業がその時は、大嫌いだった。
「ついでに、手も合わせてみろよ?」
更に追い打ちをかける。
「うるさい!!五十嵐!!変なヤジを入れないでよ!!」
そんな風にいつも揶揄われたものだ。
そんな五十嵐明彦が朝比奈麻有実の美しさ…優雅な姿を目の当たりにする時があった。
地元で徳島のサテライトショップ主催の阿波踊りのイベントの時だった。
最初は揶揄うつもりで観に行った。
揶揄うつもりだったはずが…。
女踊りの麻有実の姿は、編笠をかぶり、帯は黒、ゆかたをからげてすそよけ(おこし)を巻く。
手元には白い手甲、足元は利休下駄を履き、両腕のしなやかな動き、足の動き…周りと一糸乱れぬ動きに加え
「ヤットサー!ア、ヤットヤット!」
の掛け声にすっかり、魅了された。
それだけでは無かった。その後の掛け声。
「お先の御方にお負けなや、わたしゃ負けるの大嫌い、負けてお顔がたつものか。ア、ヤットサー、ア、ヤットヤット」
「…スゲーアイツ綺麗だ…。」
麻有実の顔は綺麗に化粧され、笑顔も学校で見た人物とは思えない程であった。
それ以来…明彦が麻有実の平均台での動きにケチを付ける事は無くなった。
「あれ?五十嵐…今日は、言わないのかよ?」
周りの声が逆に、五十嵐のヤジとなっていた。
むしろ逆に「…お前ら、黙って見ておけよ!!」と、キレる場面もあった。
当の麻有実は…また揶揄われる筈の平均台の授業で…何も言わずにただ、麻有実の足の運びを見ている明彦が逆に違和感があった。
「え…何よ。今日は何も言わないのね…。」
麻有実から突っ込まれる。
「るっせーな…ちゃんと渡れたんだから、良いじゃねーかよ…。」
そんな過去があったのか…5年ぶりに見た麻有実の歩き方につい、笑ってしまった。
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