DISTANCE

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ホテルに着いてすぐだった。 「あのさ…。」その言葉と同時に明彦に詰め寄る麻有実。 「…なんだよ。いきなり…。」 「5なんの連絡も無くて、突然、連絡来たかと思ったら、いきなり【こっちに来い】って。どういう神経してんのよ!!」 「まぁまぁ…落ち着けって。こっちにも事情ってもんがあったんだよ。」 「周りも言ってた。アイツ(明彦)は死んだんだよって。どこかで野垂れ死にしてるんだよ!って。」 「見ての通り、ピンピンしてるだろ?」 明彦は窓際に追い込まれるぐらいの迫力で麻有実が迫っていた。 「こっちはね、アンタの事なんか…忘れたくても、忘れられなかった!!海外に行ってても、何処かでバッタリ出会す(でくわす)んじゃないか?とか、街ですれ違うんじゃないか?とか…思ってたの!!」 「だから、悪かったって。謝るよ。ゴメン!!」 「5年経って…今更なによ…。」 麻有実の怒りの頂点は越して、やや下火になりつつあった。 「それで!?」麻有実が腕を組んで明彦を見上げていた。 「…それで?」明彦が繰り返した。 「こっちが聞いてるの!!それで、5年もの間、何をしてたのか?って事よ!!」 下火になりつつあったモノが再燃しかけていた。 「俺が…転勤になったのは…知ってるだろ?」 「それは知ってる!!」 「転勤になる前から、朝から晩まで…仕事して残業して…時々しか、連絡も出来なくなっていた。そこまでは分かってるよな?」 「そーね!!!! 「こっちに来ても…状況は変わらなかった。ましてや、初めての土地で右も左も分からない…。本当にゼロからのスタートだった。そこは分かってくれ。」 「まぁ…そこは百歩譲るわよ…。で?その後は?」 明彦は一息ついた。そして着ていたシャツを捲ろうとした。 「ち、ちょっと!!なんの説明も無く、なんで脱ぐのよ!!」 「…見ろよ…。」 「えっ…ええっ!?」 明彦の腹に傷があった。誰かに刺された跡とかでは無く、明らかに手術の跡だった。 「えっ?どういう事?」 「訳もわからない状態でひたすら、仕事してたら…胃ガンになってた。ステージIIIしかも、スキルスってヤツだったらしく、進行も速かった…。」 「…えっ…ガン…だったの?」 「…なんつーか…余命宣告ってヤツ?そんなのも聞かされたよ。あ、もう、先が長くねーな…って。自分でも分かってたよ。だんだんと、体力無くなってくるし、食欲も無くなってくる。もうすぐ、死ぬんだなぁ…ってな。」 「でも、生きてるじゃん!!」 「胃を半分…切除した。」 半ば、投げやりな言い方の明彦。 それを聞いてその場に座り込んでしまった麻有実。 「ゴメン…知らなかったから。」 「知らせたくなかった…。それだけだ。」 そう言って…シャツを下ろした。
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