DISTANCE

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その日の…5年ぶりという事もあってか、さすがに2人は燃え上がるような行為に及んだ。 麻有実は明彦の手術跡を舐めた。 自分が捨てられた…と勘違いしていたその傷を癒すかのように優しく舐めた。 明彦の頭の中には、あの高校時代に見た…麻有実の女踊りの可憐さがまだ残っていた。 「私が…私から、連絡無かったら…どうしてた?」 最中にも関わらず、麻有実は明彦にそんな尋問の様な事をしていた。 「捜していたさ…。」 「本当に?」 明彦が麻有実を持ち上げ、上に乗せた。 「…痛くない…の?」 「…痛くな…い。」 乱れた髪を振り払いながら、明彦の上で動いていた。 「俺が連絡しなかったら?…どうしてた?」 突き上げられる事で、息も上がって上手く言葉が出て来ない。 「麻有実…聞いてる。」 「ちゃんと…聞こえ…てる。」 「じゃあ、言えよ。」 「わ、分からない…。捜しようが…無かった…んだもん…。」 明彦の中で、あのしなやかな腕の動きや足の動き…当時の事が甦ってきた。 「…でも…逢えて良かった…生きててくれて…本当に…良かった…。」 「どこかの画廊と結婚してたのかと思ってた…。」 「私は…仕事で…飛び回って…た…だけ。」 「俺は…いつ死ぬのか…その恐怖と闘っていた。その恐怖と闘って…少しだけ、勝てた気がする…。」 「…ねぇ…抱き締めてよ…。」 明彦は上体を起こし抱き締めた。 「今、こうして抱き合ってる事自体が奇跡だと思う。」 「もう…離れない?」 「…離そうにも、離して貰えなさそうだもんな?」 そう言って唇を覆う程のキス…舌を絡ませているいた。 明彦がゆっくりと起き上がった。 「どうしたの?傷口が痛む?」 明彦は首を横に振った。 「美術品のバイヤーは上手くいっているのか?」 「ちょっと!最中にそんな話する!?まぁ、贋作とかもあるし、それを見抜かないといけないから。上手くというか…まだ修行が足りないってとこね。」 「…バカだなぁ…美術品なら、ここにある。それもとても、素晴らしい芸術品がね…。」 「5年の間に、女を口説く術も…教わったの?」 「…5年じゃないさ、あの日の麻有実の女踊り…あの時から…芸術品だと思ってた。知らなかっただろ?」 行為は昔話に変わり、その当時を懐かしんでいた。 「連絡を貰った時、殺してやりたいって…少し思った…。」 「殺されなくても…死を選ぶ道だってあったさ。そうしなかったのは、麻有実の事が気掛かりだったから。どうしようなく孤独で…ただ、死ぬのを待つばかりじゃ、後々…恨まれるのは、分かっていた。 これは賭けでもあった。一か八かの賭けだった。」 「その賭けに勝った?」 「…今は勝てたと思っていたい。でも、あの時の恐怖は思い出すだけで…怖いな。」 麻有実は明彦の右手を自身の胸に当てがった。 「恐怖と私と…どっちが怖い?」 「どっちも怖いな?」 一瞬の間を置いて...二人はまた、絡み合った。5年の歳月を埋めようとしていた。
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