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 あの日、声をかけてきた未空(みく)の体が、千青(ちお)の瞳には、光り輝いて映った。  千青が小学校四年生になり、二ヶ月ほどが経った頃、国語の授業で、読書感想文を宿題が出された事があった。  両親が共働きでいつも一人で過ごしていた千青は、本が大好き。しかし感想文は学校の図書館で借りた本を元に書かなければならなず、引っ込み思案の千青にとって、それは簡単な事ではなかった。  本の借り方は一年生の時に教わっていたため何となくは理解できていたが、間違っていないという自信は持てず、図書委員の上級生に声をかけるのも恐ろしい。  勇気を出して図書館に入ったものの、本を手にカウンターへ近づくと体が震えだし、次の一歩を踏み出せなくなってしまう。  何とか一度だけカウンターの前までたどり着けた事があったが、間の悪い事に図書委員の先輩は司書の先生と話していて、勇気を振り絞って発した千青の小さな声は、先輩に届く事はなかった。  ショックを受けた千青は、余計に本を借りる事が怖くなってしまった。放課後、毎日のように図書館に通っては自分の弱さを痛感させられ、そうしているうちに、宿題の期日が近づいていった。  元々友達付き合いが苦手な上、この頃、進級と共にクラス替えが行われたため、相談に乗って貰えるクラスメイトもいなかった。  真面目な千青にとって、宿題を提出できない事は大きな問題であったし、そんな事で悪目立ちしてしまったら、ますますクラスに馴染めなくなってしまうかもしれない。毎日波のように不安が押し寄せ、その度に千青の瞳には涙が滲んだ。
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