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「それで、旦那さまはいかが思われました? ご自身の婚約者について」
「……美しい、と」
ジルの質問がからかいを含んだものであることには気づいていたが、ガイウスは正直に胸の内を吐露した。
「あんなに繊細で、可憐な女性がいるのかと驚いた。彼女は本当に人間の女性か? 妖精か天使の化身かと思ったぞ。俺が触れたら砕けてしまいそうだ」
「突然、詩人のようなことを平気でおっしゃいますね……」
呆れたジルの声を受けても、ガイウスは真顔だ。
「彼女を前にしたら、誰だって詩人になる。あの美しい銀色の長い髪、神秘的な紫色の瞳、折れそうに細い腰……その歌声も含め、彼女は本当に、聖女という称号に相応しい佳人だ」
「まぁ旦那さまのお気に召したのであれば、幸いです。では、結婚までの手続きを無理に遅らせる必要もないですね」
「ああ。俺のような男と結婚しなければならない境遇にある彼女には気の毒だが……」
「何をおっしゃいますやら。むしろ旦那さまと縁づいたことは、彼女にとっても幸せとなるはずです」
「まあ、必要以上に顔を合わせることのないように配慮しよう」
「旦那さま??」
予想外の宣言に、ジルは目を白黒させる。
「せっかくセレーネさまを気に入られたというのに、わざわざ彼女を避けるのですか?」
「当然だ。彼女はこの結婚の最大の被害者だからな」
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