1 アンタの歌には価値がある

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「その、お言葉は嬉しいのですが……」  思いがけない反応に戸惑いながらも、セレーネは彼が勘違いをしているのではないかと慌てて口を開く。 「聖女とは言いましても、私は教会の中でも最下級の力しか持ち合わせておりません。怪我や(やまい)に関しては、まったくの役立たずです。私にできるのはせいぜい、歌声で痛みを和らげるくらいで……」 「それを求めていた」  端的にそう告げると、(いか)めしい顔つきのままガイウスはやおら身に纏っているマントを床へと放り捨てた。  どさり、という重い音を背に、今度は騎士団長の徽章(きしょう)のついた上着の前を彼は躊躇(ためら)いもなくガバリと開く。 「きゃっ」 「旦那さま……」  初めて目にする男性の脱衣に赤面して目を背けるセレーネと、困り顔を浮かべながらも服が崩れないように拾い集める執事。  両者の反応を尻目に、肌を隠す最後の一枚となるシャツの前をガイウスは大きく広げる。 「これを、見てくれ」  低い声の指示に、セレーネは恐々(こわごわ)と顔を上げた。  上半身であっても、男性の裸体を見ることは初めてのことだ。羞恥心で逃げ出したくなる衝動を、無理やりに抑えつける。  大丈夫、いずれ旦那さまとなるお方なのだから……自分にそう言い聞かせながら、おずおずと示された場所へと目を向ける。  そこで彼女はハッと息を呑んだ。
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