4 俺の婚約者が可愛すぎる

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「はいはい、お話伺っておりますよ。仕事がありますので、手短に願いますね」 「彼女はまず、性格がものすごく良い」  ジルの返事をまるっと無視して、ガイウスは食い気味に語りはじめた。 「優しさに満ちていて、気遣いが細やかだ。屋敷のちょっとしたことまで見ていて、使用人の体調不良にもすぐさま反応している」 「おかげさまで、旦那さまのことを怖がっていた使用人の忠誠心もうなぎ登りですね」 「そして次に、声が良い。彼女の喋る声は鈴をふるようで、聞いているだけで夢見心地になる。その声で歌われる奇跡の歌は、ここが天国ではないかと思うほどには素晴らしい」 「ええ、ええ。部屋から漏れ聞こえてくる歌声だけでも、身体から力がみなぎるように感じます」 「さらに、言うまでもなく見た目も可愛らしい。世の芸術家たちは何をしている? ここにこの世の愛らしさをすべて集めたような存在が居るというのに。……もちろん、俺の婚約者を衆目に晒すことなどしないが」 「本当に可憐で美しい方ですね。こちらに来てから表情もどんどん柔らかくなって、ふんわりとした笑顔はお日様のようです」  ガイウスはかつてないほどの口数で、流れるようにセレーネの美点を挙げていく。  無口で何を考えているかわからないと(ささや)かれる凶悪騎士団長の姿はそこにはない。 彼は今や、婚約者の可愛らしさにひたすら目を細める情けない男に成り下がっていた。
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