1 アンタの歌には価値がある

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「これは、魔物にやられたのですか。なんてひどい、呪いの跡……」 「ああ、三ヶ月前の傷だ。魔物は(ほふ)ったが、この傷はいつまで経っても治らん」 「怪我には慣れているはずの旦那さまが、ここ最近はずっとこの傷の痛みに苦しめられているのです」 「ジル、黙ってろ」  横から口を出した執事に、今にも噛みつきそうな声でガイウスは唸る。  しかし、そんな殺気立つ彼の声を気にせず、ジルと呼ばれた執事は言葉を続けた。 「いいえ、黙ってはいられません。旦那さまのお身体に関わることなのですから! 聞けば、魔物の呪いによる苦しみは一生涯ついてまわるとのこと。私も心を痛めていたのですが、聖女さまのお力があれば……!」 「その口を閉じろと言ってるんだ。こっちの勝手な都合を押し付けるな」 「いえ、やらせてください」  押し問答する二人を前に、迷いなくセレーネははっきりと答えた。  常に相手を睨んでいるような吊り上がり気味のガイウスの目が、驚きに丸くなる。その反応に微笑みをこぼしながら、セレーネは背筋を伸ばした。 「どこまでお役に立てるかわかりませんが、私の歌を捧げましょう」
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