5 歌うのは、嫌いか

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「お見苦しいところをお見せしました」  徐々に冷静さが戻ってくるにつれて、羞恥心が込み上げてくる。  ガイウスの胸に顔を(うず)めたまま、セレーネはそっと謝罪の言葉を口にした。 「俺は気にしていない」  ぶっきらぼうなガイウスの言葉が、どれだけ嬉しいことか。  優しく、強引ではないほどの強さで彼はセレーネの肩を抱く。 「俺はセレーネの歌が下手だと思ったことはないし、良いと思っている。でも、その音程やら曲目やらに引け目を感じるってなら、いっそそれを習ってみたらどうだ」 「習う、ですか……?」 「ああ。プロの歌手に指導してもらえば良い。その最低な男は別に歌の専門家ってわけでもないんだろ? プロに認めてもらえれば、自信もつくんじゃないか」 「でも、プロの歌手なんて……」 「任せろ」  戸惑うセレーネに、ガイウスは自信たっぷりに答える。 「俺にひとつ、アテがある」  
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