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「お見苦しいところをお見せしました」
徐々に冷静さが戻ってくるにつれて、羞恥心が込み上げてくる。
ガイウスの胸に顔を埋めたまま、セレーネはそっと謝罪の言葉を口にした。
「俺は気にしていない」
ぶっきらぼうなガイウスの言葉が、どれだけ嬉しいことか。
優しく、強引ではないほどの強さで彼はセレーネの肩を抱く。
「俺はセレーネの歌が下手だと思ったことはないし、良いと思っている。でも、その音程やら曲目やらに引け目を感じるってなら、いっそそれを習ってみたらどうだ」
「習う、ですか……?」
「ああ。プロの歌手に指導してもらえば良い。その最低な男は別に歌の専門家ってわけでもないんだろ? プロに認めてもらえれば、自信もつくんじゃないか」
「でも、プロの歌手なんて……」
「任せろ」
戸惑うセレーネに、ガイウスは自信たっぷりに答える。
「俺にひとつ、アテがある」
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