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「えぇと……」
「ああ、取り分けますねー」
戸惑うセレーネの姿に、店員が即座に気を回す。
確かに経験のない彼女には、骨付きの大きな肉の塊や頭や殻がそのままついたエビの身をどうやって切り分けたら良いかわからなかっただろう。
……戸惑っている理由は、そこではないのだけれど。
たくさんの種類の料理がほんの一口ずつ綺麗にお皿に盛り付けられ、そしてその三倍以上残る大皿はすべてガイウスの元に回される。
「乾杯だ」
「はい!」
渡されたグラスを、そっとガイウスのものと合わせる。
最初は戸惑ったものの、渡された料理はどれも目を見開くほどに美味しい。セレーネはいつの間にか本来の目的も忘れて食事に夢中になっていた。
スパイスのきいたスープ、豪快な焼き目の香る肉、正体のわからない不思議な食感の半透明な具材……どれもこれも、今まで口にしたことのない味だ。
気がつけばお皿の中は空っぽになっていて、そして自分のお腹ははち切れんばかりにいっぱいになっていた。
「気に入ったようだな」
笑いを含んだガイウスの声に、頬が赤くなるのを感じる。少し詰め込みすぎてしまっただろうか。
チラリと見れば、セレーネの三倍の量はあったはずだというのにガイウスの皿もすっかり空っぽになっていた。彼の健啖っぷりに、内心で舌を巻く。
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