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「そうかい、そうかい。そんな素直な褒め言葉を聞くと、背中が痒くなっちゃうね。まぁ喜んでもらえて何よりだよ。……団長さん、こちらの可愛い方はどなた?」
「俺の婚約者だ」
へぇえ、とガイウスの言葉に目を丸くして、女性はセレーネに手を伸ばす。
「団長さんに、こんなに素敵な婚約者さんが現れるとはね。おめでとさん! ……私はティナ。しがない酒場の歌手をやってる」
「よろしくお願いします……!」
「んで? 団長さんは婚約者を連れて、どうしてこんな酒場まで?」
「それがだな……」
「……という訳で、ティナ。アンタに歌の指導を頼みたい」
「はぁぁああ〜??」
ガイウスが手短に事情を話し終えたところで、ティナの口から飛び出してきたのは素っ頓狂な悲鳴であった。
「ウソでしょ、本気で言ってんの? 聖女サマ相手に? 酒場の女が歌唱指導??」
「何かまずいのか」
「いやいや、冗談はその怖すぎる顔だけにしといてよ。聖女サマとかお貴族サマの歌ってのは、もっと高尚で芸術的なモノでしょ? 酒場で歌ってる下賤な私に教えられるわけないじゃない! セレーネちゃんだって、突然こんなトコ連れて来られて絶対びっくりしてるわよ!」
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