6 ウソでしょ、本気で言ってるの?

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「その、ティナさんはガイウス様のことを怖がらないんですね……」  口に出してから、自分がとんでもなく失礼なことを口走っていたことに気がつく。 「いえ! その! 怖がってほしいわけではなくて、ですね……!」 「酒場で歌なんて歌ってたら、どうしたって度胸はつくからね。確かに団長さんはいつも顰めっ面だし目は釣り上がってるしガタイは良いしで迫力あるけど、別に居酒屋で暴れるわけでもなし。むしろ店の治安が良くなるから、ありがたいくらいよ」  あっさりと答えてから、ティナは「ああ」と呟いてニヤリとする。 「こんなに可愛いコにここまで愛されてるなんて、団長さん、ニクいねぇ!」 「何を言う。彼女に失礼だろう」  ガイウスは憮然とするが、ティナの確信に満ちた態度は変わらない。 「なーに言ってんの、本当に朴念仁(ぼくねんじん)なんだから! 今の反応見ててわからない? このコ、団長さんに近すぎるって私にヤキモチ妬いているのよ」 「何を馬鹿な。なぁ、セレーネ?」  軽い調子で振られるが、セレーネは「う」とか「あ……」とか言葉にならない声を返すことしかできない。  ティナに指摘されて、ようやく気がついたのだ。自分のこの感情が、紛うことない嫉妬心だということに。
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