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「そんなことが……」
驚きに息を呑むジルに、ガイウスはさらに告げる。
「当然、彼女にもこのことは話してある。そのうえで教会の聖女認定の見直しを要請するかどうか、彼女に確認した。呪いの浄化ともなると、認定は上級聖女になるのが妥当だろう」
「そんな、旦那さま! もしそんなことになったら……」
上級聖女として認められれば、彼女の価値は跳ね上がるだろう。ガイウスよりももっと家柄も資産もある貴族たちが、彼女と縁を持ちたいと押し寄せるはずだ。
そうなったときに、ガイウスには彼女を引き留める手段はない。婚約承認なんて、紙切れも同然だ。
「彼女の当然の権利だ。それで彼女が幸せになれるなら……と思ったんだがな」
苦笑いを浮かべて、ガイウスは首を振る。
「だが、彼女は断ったよ。なんの未練もなく、きっぱりと……な」
『この奇跡はきっと、ガイウス様にしか発動しないと思います』
――もっとよく考えろと食い下がるガイウスに、セレーネは確信に満ちた声でそう答えたのだった。
幸せそうに微笑む彼女の表情に、迷いはない。
『あなたの婚約者になれたから、私は輝けたんです。きっと、誰よりも大切なあなた以外にこの奇跡は届かない。どうか、これからもおそばに置いていただけませんか』
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