7 俺と、結婚してほしい

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 息をすることも忘れてセレーネの返事を待つ彼の手に、そっとセレーネの右手が触れた。 「はい、ガイウス様。喜んで」  へなへなとガイウスは安堵で崩れ落ちそうになる。そんな彼の耳に、「……でも」とセレーネの不吉な言葉の続きが飛び込んできた。  何を言われるのだろうと心臓を鷲摑みされたような顔でその言葉の続きを待つガイウスに、セレーネは少し拗ねたようなふくれっ面を向ける。 「ご自分のことを『汚れた』とか『凶悪な顔』とか言わないでください。ガイウス様はお優しくて、まっすぐで、もう立ち直れないと思っていた私を救ってくださったヒーローなんですから。見た目だって、凶悪ではありません。むしろ、格好良いです!」 「そう言ってくれるのはセレーネぐらいのものだが……」 「内面の良さは皆様に知ってもらいたいですが、ガイウス様が格好良いのは私だけが知っていれば十分ですね」  いたずらに微笑んでから、花束を抱えたままセレーネは膝をついたガイウスの頭をそっと引き寄せる。  二人のシルエットが一瞬だけ重なり、そしてまた離れた。 「そ、その……今のは……!?」  一瞬の出来事。  まだ感触が残る唇をガイウスは落ち着きなく触った。今起きたことは、本当に幻ではないのだろうか。 「私だって、ガイウス様のことを愛してるってことですよ」  余裕ぶって返すセレーネだが、その頬は隠し切れないほどに朱に染まっていく。 「セレーネ!」 「きゃっ!」  抑えきれずがばりと彼女を抱き締めると、小さな彼女の身体はすっぽりと自分の腕の中に入り込んでしまった。その温もりが、あまりに愛おしい。 「貴女は……時々、私よりも大胆で男らしい」 「お嫌でしたか?」 「まさか」
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