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2 私、あの方とやっていけると思う
「お部屋にご案内します」
そう言って先を行く侍女は、セレーネと同じくらいの年代の少女であった。
応接室を出たときは寡黙で伏し目がちだった彼女はしかし、実のところ好奇心の強いタイプだったらしい。
チラチラとセレーネを気にしながら歩みを進め、やがて部屋まで案内を終えたところで我慢できなかったように口を開く。
「その、お嬢様が血塗れ候のお嫁さんになるんですか?」
「血塗れ侯なんて……」
思わず呆れた声がセレーネの口から飛び出した。
確かに口さがない世間でガイウスがそんな呼ばれ方をしているのは承知しているが、だからといって使用人が声に出して良い呼び方ではない。
「もしかして貴女、使用人になって日が浅いの?」
「なんでわかったんですか!? そうなんです。血塗れ侯の屋敷がお嫁さんを迎えるって急遽侍女の募集があって。怖い人だからって敬遠していたんですけど、お給料が良かったから」
えへへと笑う彼女に、悪気は一切見えない。
「自分の主人のことをそんな呼び方をしては、いけないわ。本人の前でなくっても」
「そうなんですか? 気をつけます。それで……」
叱られたというのに相変わらずキラキラと好奇心に満ちた視線を向ける彼女に、セレーネは苦笑する。
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