2 私、あの方とやっていけると思う

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「ええ。私がガイウス様の婚約者。これからよろしくね」 「やっぱり、そうなんですね! 身の危険を感じたら、すぐ言ってください。私はお嬢様の味方ですので!」 「味方って……」 「だって、あの血塗れ侯……は言っちゃダメだった、野蛮で残忍なことで有名な旦那様と結婚なんて……絶対大変じゃないですか! ちょっとでも機嫌を損ねたら暴力を振るわれそう! こんなお淑やかなお嬢様がそんな目に遭うなんて、私、心配で心配で……」 「…………」  ――野蛮で残忍。  悪気なく口にされたその言葉に、セレーネはじっと考え込んだ。  確かに、ガイウスの評判はあまり良いものではない。  男爵家の三男でありながら、圧倒的な力で騎士団長の地位に就いたガイウス。しかし、その戦のやり方は残忍で、味方ですら(おのの)くものだったと伝えられている。  特に彼の騎士団長就任のきっかけにもなった、西方のクーデターの話は有名だ。  人数差を覆した彼の活躍は凄まじく、身体中に返り血を浴びながら叛逆する豪族たちを捩じ伏せ、血祭りに挙げていった姿はまさに鬼神。  彼が居なければクーデターは未だ鎮圧できていないのではないか、とすら言われている。  そんな功績を称え、ガイウスは騎士団長就任と同時に一代限りとはいえ侯爵位まで授かったのである。  しかしそれは同時に、「血塗れ侯」という彼の不名誉な呼び名まで有名なものとしてしまった。  実際、セレーネも先ほど初めて彼に(まみ)えた瞬間はその迫力に震え上がったのだが……。
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