One Rainy / Sunny Day

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 緑の木立がどこまでも続いている。ヴィヴァルディの冬を聴きながら、濡れた地面を蹴って行くと、ブーツの爪先がしっとりと濡れ始めた。  ――私も結構雨女だけど、さらに雨男だよね。ドイツ語でそういう言い回しってある?――  ――無いね。晴れようが降ろうが本人には何の関係もないから――  ドイツ人そのもののロジックぶりに、ああ硬い、何て遊びのないと思った途端、見抜かれた。 「今うんざりしたね? 衣織(いおり)は意外にわかりやすい」  そう言った瞳が柔らかく弧を描いた。    雨の日はいつも思い出す。
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