16人が本棚に入れています
本棚に追加
「明日、ヴィンシーが来るよ。今ベルリンから帰省中なんだ」
「幼なじみの? 緊張するなあ。全然ふさわしくないとか言われたらへこむ」
「大丈夫だって」
「でも親友でしょ?」
「うん。大がつく」
「大親友か…… それはある意味一番手強いって言うか」
ブツブツ言っていると鼻をつつかれた。
「ん?」
「ヴィンシーは僕のこと一番わかってるから。何せ幼稚園から一緒だしね。だから絶対大丈夫」
そうかなあと溜息をこぼすと、頭のてっぺんに口づけが降ってきた。うふふ。くすぐったくて身をよじるとぎゅっと抱き締められた。
留学先のロンドンで出会ったカイ・ヴォルフとは、私がそのまま博士課程に進み、彼がミュンヘンに戻った後も遠距離で恋愛を続けていた。意志の強そうな焦げ茶色の瞳がじっとこちらを見つめてきた時に、恋に落ちたのだと思う。そのカイの実家にはもう何度か呼ばれていて、その夏も休暇を日本とミュンヘンとで半分こにして過ごしていた。付き合い始めた頃から、件の大親友であるヴィンセントの話はちょくちょく聞いていた。
だから出会った時、彼は恋人の親友で、私は親友の恋人だった。
最初のコメントを投稿しよう!