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目の前の状況から目を逸らすように、グリシェは頭に浮かぶ疑問をただ口にしていく。
「何故、今になって……」
「もちろん、お嬢様の初恋の話を聞いたからです。……ずっと、お慕いしていました。でも、お嬢様の求める相手に自分は相応しくないと、この気持ちを押し殺していた。それなのに、お嬢様の初恋の相手が俺だなんて聞いたら、もう抑えられるわけないじゃないですか……!」
「わわわ、わかった! わかったから!」
漠然と思い描いていた初恋の少年の姿が、目の前のトゥーヤに重なっていく。それは今まで恋愛感情から遠ざかっていたグリシェには強すぎる刺激で……。
ちゅっ、という音と共にトゥーヤの唇がグリシェの右手から離れた。そして彼女の顔を見上げた彼はニッと笑む。
「手に接吻しただけでこんなに真っ赤になるなんて、お嬢様は本当に可愛いなぁ」
「なっななななな……!」
キャパシティを超えた出来事に言葉すら出て来なくなったグリシェを見て、トゥーヤは愛おしそうに微笑む。
「ありがたいことに、大旦那様は俺のことを買ってくれています。地位のことは気にするなと……だから後は、お嬢様の気持ち次第なんです」
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