35人が本棚に入れています
本棚に追加
「愛しています、お嬢様」
ほとんど囁き声のようなそれはグリシェの耳朶をくすぐり、彼女の身体に火をつけていく。
「トゥーヤ……」
爆発しそうな心臓を抱えながら、グリシェは必死に声を出した。
「正直、今はまだいっぱいいっぱいで、何をどう答えたら良いのかわからないんだ! ただ、初恋の相手がトゥーヤで良かったとは感じているし、大剣を操るトゥーヤの姿はあの頃と変わらず格好良かった、とは思う……。ただ、さっきからトゥーヤを見てると心臓がどきどきするし気持ちはソワソワするしで、正直それどころじゃなくて! 異性としてどう思っているかは、もう少し落ち着いてから考えさせてほしい……」
グリシェを壁へと追い詰めていたトゥーヤの身体が、震えだす。おそるおそる彼の顔を見上げれば、トゥーヤが必死に笑いを堪えているのがわかった。
「可愛いなぁ、お嬢様は……そこまで言ったらもう、俺のこと、大好きって言ってるようなもんじゃないですか」
「そっ、そんなつもりは……」
「ええ、わかってますよ。大丈夫です、お嬢様。お嬢様の気持ちの整理がつくまで、俺はいくらでも待ちますとも。ひとまず……」
そっと身を屈めて、トゥーヤはグリシェの耳元に囁く。
「明日もまた、お嬢様の目の前であの剣技を披露してみせますね」
最初のコメントを投稿しよう!