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第一話
神様はいつものローブ姿で街をお散歩していました。
道路を歩く人達はみんな神様と似たような葦のサンダル姿。贅沢出来ない人は、裸足です。趣味で動きやすい裸足を選ぶ人もいます。戦争はとうの昔に終わり、多くを望まなければ、みんなちゃんとご飯が食べられます。
神様は自分と同じくらい若く頭も丸めていない坊さんを見つけました。話しかけます。
「僕にかみつくと血の代わりに葡萄酒が出てくるよ。かみつかせてあげる。かみついてみない?」
やさぐれ坊さんが一蹴します。
「うるさいな。黙ってろ」
言うのに、神様の手をしっかり握って歩き出しました。
神様はトコトコ坊さんについてゆきます。もっとたくさん話したくなりました。
「僕を煮込むと甘い蜜になるんだ。煮込んでいいよ。煮込んでみない?」
やさぐれ坊さんは振り返りません。
「バカ。安売りすんな」
言うのに、神様の手を離しません。
「でもみんな煮込むよ」
「ふざけるな」
坊さんは神様の話を聞いてくれません。
神様はもっとたくさん話します。
「僕をひっぱたくと、口から金貨が出てくるよ」
「汚いし。」
やさぐれ坊さんがツッコミを入れます。
神様はやる気になって言いました。
「たたかせてあげる。たたいてみない?」
やさぐれ坊さんは怒りました。
「痛いじゃないか」
「でもみんなたたくよ」
坊さんが涙を流したので、神様はびっくりしました。
「何が苦しいの」
坊さんが答えます。
「これはお前の涙だ」
言いながら、神様の手を強く握りました。
神様は自分の悲しみについて、いつだったか忘れてしまいました。だから、お坊さんの涙の意味がわかりません。
でもお坊さんが大好きになりました。
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