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教室
「なんだよオマエ、まだ出来ねぇの?」
放課後の教室。クラスメイトの何とかさんはコチラを見て、手を叩いてそう言った。
名前は言いません。そろそろ歯科検診の季節。汚いモノばかりノドを通すとお医者様に怒られてしまいますから。
「できなくて何か困りますの?」
「はっ、ばぁか。こんなのも出来ないひ弱なヤツお荷物だろ」
「……腕力なども無くとも仕事は沢山ありましてよ。偶蹄目なのに視野が狭いですわね」
「だ、だれが偶蹄目だ!」
「あら違いまして?、36点の脳ミソで棒にぶら下がってばかり。てっきりローストポークにでも就職するのかと」
「なんだと……ってオイ! なんで点数知って――」
「ホホホなぜでしょう」
突然 刺された痛みに青ざめる彼の顔に高笑いを お一つ。おもむろにスカートから丁寧に折られた紙ヒコーキを取り出す。
嗤いには嗤いを。コレでも関西人のはしくれ。わきまえておりますとも。
「ていくおーふ♪」
妹に灰をかぶせるような声で高らかに。私は重い切り窓の外へ向かって、その紙ヒコーキを放った。
「、あ! 待てッ!」
「待ちません。ではごきげんよう」
大慌てで飛び出していった男の背中に手を振りながら、一人、満足げな顔で教室を後にする。
「クソッ! フザけんな毒林檎! 魔女!」
涙の混じったしょうもない罵倒を荒げながら、フゴフゴと彼は掛けていく。慣れない二足歩行で、あぁ可愛そうに。
誰にも見せれない。というか見せる相手も居ない、奥歯まで覗く歪な笑顔は口の中に。
曇天の帰り道、空はまだ白い午後三時。
一人、私は帰りの駅へと歩いて行った。
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