目撃

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目撃

 あれから2ヶ月弱過ぎた平日。    私は昼休みの時間を利用して産婦人科に寄った。  実は同僚の女性が検査入院することになり明日の会議の資料を受け取る約束をしていたのだ。  1階の玄関の中に入って受け取ったんだが、ロビーには昼からの診察予定の人がもういっぱい来ていた。  何気なく見回して帰ろうとしたとき、私は見てしまったんだ。  妻がそこにいたんだ。  妊娠ってことはないから体調でも悪かったのかなと思い声を掛けようかと近づきかけたら、その横には私の弟が座っていた。とても馴れ馴れしく。  弟は私より10才も下で、高齢の両親から生まれたために親から甘やかされて育った。30歳を過ぎて独身だった弟はまだ就職もせず、劇団とバイトの掛け持ちで未だに親に援助もしてもらっていた。  私の代わりに付き添いを頼んだのだろうかとも思った。  それでも私に一言あっていい。  それに、あのラブホテルの場所でのこともあり、一生懸命打ち消して考えないようにしていたのに、頭の中は二人のことでいっぱいになってしまっていた。    そうだ。二人を疑い警戒を始めたのがこの頃だった。
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