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木暮俊(こぐれしゅん)の手記
僕の身に起きた奇妙な出来事を記しておく。
僕は高校1年で、いじめにあっている。虚弱で小心なので、使い走りにさせられ、さらには万引きなどの犯罪も強要された。
すり鉢の底にいるようで、ここから出る方法がない。こんな生き地獄の日々から逃れるには自殺するしかないと、僕は思い詰めた。
その手段として選んだのが、電車への飛び込みだ。
それが多くの人に迷惑をかける行為だとわかっていたけれど、電車に乗るのが趣味だという乗り鉄の僕には、それが一番合っていると思った。
子供みたいだけど、窓から見える景色を見るのが楽しみの僕は、地下鉄以外の様々な路線の電車に乗った。
中でもよく乗るのが、自宅の最寄り駅のあるS線で、ずっと乗っていると畑のあるひなびた景色が広がるところが気に入っていた。
この路線に最近新型車両が導入され、その颯爽としたネイビーブルーの車両の格好良さには、撮り鉄のカメラ小僧はもちろんのこと、車両に特にこだわりのない僕も心を奪われた。
そして、あの電車に飛び込んで、魂をどこか遠くに連れ去られたいと願うようになった。
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