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海にカメ
本当は、本当は、海の向こうの世界になんて期待していなかった。本当は、本当に望んだ世界は海の先にはなくて、海の底にあるのではないか。今はそう思う。
暗くて冷たい水の底にこそ自分の求めた不可思議な世界はあるのではないか。全てを消し去って、自分はただ沈んでいきたい。
海を、水平線を越えて自分の望んだ世界は海の先にあったのだろうか。それとも、海の底にあったのだろうか。
カメは見ていた。
たった一人になっても、望むことを止めなかった。いく先がどちらであっても、見ることだけは諦めずにあの目で見続けた。
波の音を聞くと、カメを砂で作りたくなる。
この場所に。
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