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静かに息を吐いて眠っているカイトの掌をそっと取った。ごつごつとした固い皮膚の大きな掌だったけれど握るととても安心した。
(……温かい)
とっくにかけがえのない存在となってしまったカイトがこうして傍にいるだけでじわじわと幸せを感じる。だからこそ少しでも離れていたり私の知らない処で危険な目に遭うことが怖かった。
私はもう、ひとりだった時には戻れない。この掌を……愛おしい温もりを知ってしまったから。
「……カイト」
小さく呟くように愛おしい人の名前を呼ぶ。そんな私の呟きが全く聞こえていないだろうカイトは相変わらず健やかに眠っている。
(う~~~ん……どうしよう)
こんなに熟睡しているカイトを起こすのは可哀そうだなと思いながらどうしたものかと思案していると急にカイトのお腹が大きく鳴った。
(っ、ビックリしたぁぁぁ!)
寝ながらお腹の虫を鳴かせるなんて相当お腹が空いているのだろう。ここは心を鬼にしてもうしばらく経ったら優しく起こしてあげようと思ったのだった。
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