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「えぇ、そうです。三大欲求が何か分かっていますよね?」
「……チッ」
思わず舌打ちした私を見て八月一日宮が口の端を上げたのを見逃さなかった。
(またからかうつもりね!)
こういう八月一日宮の顔はこの数時間で随分と見慣れていた。
「俗に睡眠欲、食欲、性欲の順で強いといわれています。今のカイトの場合は既に性欲は満たされているので残り睡眠と食欲。まぁ同時に満たされそうですね」
「八月一日宮、食事中に俗っぽい話をしないで!」
「俗っぽいですか? 欲があるのはいいことですよ。恥ずかしがることではありません」
「そういうことをいっているんじゃなくてねぇー」
八月一日宮とどうでもいい会話を続けていると不意に視線を感じた。それは眠そうな顔をしながらも忙しなく口を動かしているカイトが私をジッと見つめているものだった。
「何?」
「……随分陽と仲がいいんだな」
「──は?」
「俺がいない間に仲良しになったのか?」
「~~~っ」
思いもよらないカイトの言葉に憤慨したことはいうまでもない。
「カイトには私と八月一日宮が仲がいいように見えているの?」
「あぁ」
「残念でした。全く、全然仲よくなんてないから! というか八月一日宮は私をからかっているだけなんだからね」
「そうなのか?」
「そうなの! ね、そうでしょう、八月一日宮」
同意を求める様に八月一日宮に視線を送ると何故か口角を上げながらフッと笑った。
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