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「カラさんはお母様の事を知っていましたか?」
「は? 知っていたって、何を」
「お母様がどんな生い立ちでどうやってあなたを生んだのか──お母様の過去をご存知ですか?」
「……過去」
物心ついた時には私には母しかいなかった。母から訊かされたことといえば、父は私が生まれる前に死んでいて母の実家は父との結婚を反対したために絶縁状態にあったから母と私には頼れる人がいないのだということだけ。
だからふたりで強く生きて行こうねといっていた母が、私が13歳の時に突然の病で他界した時はしばらく茫然としたものだった。
「お父様と駆け落ちしてこの家でひっそり暮らしていたと、そうお訊きになっていたのですね」
「そうだけど」
「ではお母様のご実家の事は何も知らないと」
「何、あんたたちは母の実家絡みでやって来たっていうの?」
「お察しのいいことです。流石スイ様の娘さん──いえ、スイ様の最高傑作」
「……は? 最高……傑作?」
その瞬間、なんだか嫌な感じがして背筋に悪寒が走った。
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