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(本当、気遣い屋だな)
その見てくれからは想像がつかないほどに気が付く生真面目な性格に何故か惹かれる。勿論その惹かれるという気持ちは『人として』の領域での事だ。
(七扇にそういう気持ちって持てない気がする)
私を一切甘やかさない、手を出さない、迫らない──そんな七扇に甘い気持ちを持つなんて無理な話だ。
(こいつは早々に脱落なのかな)
私をものにして子どもを孕ませる気が満々なのは八月一日宮とソルのふたりという事になるのかと思うと少しだけ複雑な気持ちになった。
(ふたり共、其々いい処も悪い処あるけれど……)
どちらもいまいち決め手に欠けていて未だにどちらかを選ぶことは出来ていない。と、そこまで考えてハタッと気が付いた。
「ねぇ」
「あ?」
「あんたたちっていつまで此処にいるの?」
「は?」
「期限っていうか、三澄家が私を見つける前に三人の内の誰かと結婚しなきゃいけないって大雑把な説明はあったけど、それって具体的にどれくらいの期間でなんとかするものなのかな」
「……決めたのか?」
「え」
「陽かソルか。どっちを選ぶか決めたのか」
「なんであんたは入っていないの」
「俺は──……」
「俺は?」
「……おまえ、俺のこと嫌いだろう」
「なんで」
「だって俺、初っ端おまえに酷い事をした」
「酷い事?」
「最初の日に──玄関で」
そう言った七扇の言葉で(あぁ、そういえば)と思い出した。
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