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「カラさんが誕生するまでにスイ様はありとあらゆる遺伝子操作を行いました」
「遺伝子操作?」
「難しい事はわたしにもわかりかねますが、スイ様はご自身が持つ全ての技術力を用い優秀な受精卵を作り上げました。そして代理母の胎内で育つ過程でもあらゆる手を施し最良且つ最高の環境で出産までこぎつけたのです」
「……」
「それがカラさんがスイ様の最高傑作といわれる所以です」
「私は……人工的に作られた……子ども」
「そうです。でもスイ様はカラさんをとても愛し、慈しみ育てて来たでしょう?」
「……」
その発言に否定的な言葉は返せなかった。確かに母は亡くなる其の時まで私をとても可愛がってくれた。だからこそ今もたらされた出生の秘話が信じられなくて──
(……でも、母から生まれていなくても私を形作っているのは母……だ)
根本的な生命の核は母から出来ているのだと自分自身にいい訊かせ、なんとか冷静さを保とうとした。
「だいじょうぶ?」
「!」
突然膝の上で硬く握りしめていた両手にふんわりとした温もりが重なった。俯いていた顔を上げると、いつの間にか私の隣に座っていた顔のいい左端の男が寄り添っていた。
「ショック? ……かなしい?」
たどたどしく紡がれるその言葉が何故か私の荒れた心にじんわりと染みて行き、気が付けば激しく動揺していた気持ちが和いで来ていた。
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