第24話 勇者ざまぁ⑫一回だけ言わせてください

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第24話 勇者ざまぁ⑫一回だけ言わせてください

 私とレオは村に戻って、みんなに魔王を打倒したことを報告をしました。  魔王の魔力の残滓は取り逃がしたものの、この大陸中で闇の魔力が払われて魔物が減り、暖かくなっているようです。  それ以降、旧ラオベルグラッドの王族や高位貴族の子弟たちは、神殿や、各地で生き残った方々と連絡を取っています。  ラオベルグラッド王国の武官系の貴族たちは各地で村落を守って戦い続けていたこと、それによって生存していた人々が予想していたより遥かに多かったことがわかって、レオメルドも村のみんなもとても明るい表情で活動しています。  そんな生き残っていた方々はレオメルドと私たちによる魔王打倒に歓喜し、祝福と感謝と未来に向けた相談を持って次々に来訪してくれました。  高潔な方々がその責務として民を守る姿というのは見ていて気持ちがいいですね。  王国を再興したのちもその意識を忘れないように願います。  銀の若木となった守り神様はラオベルグラッド王国の王城再建後はその庭園に移ってきてくれるそうですから、今後も様々な歴史や教訓を残して見守ってくださるように、お願いしておきました。    王都再建は多くの人の熱気もあって、かなりの速度で進んでいます。  私はみんなが活力に満ちているのが嬉しいです。    そして、なんと実はアホ勇者は生きていました。  今はバルグート王国で幽閉されています。  2度にわたって攻略に失敗して仲間を失い、謹慎を命じられたのに勝手に副騎士団長まで連れて魔王に瞬殺されたなんて恥ずかしくて出てこれないですよね……。  と思うのですが、そういった感覚は持ち合わせていないようで、『魔王を倒せたのは自分が弱らせたからであってエメリアはいいとこどりしただけのクソ女だ』と仰っているようです。  いけませんね。つい乱暴な感情が抑えきれなくなります。  アホ勇者は、世界がアホ勇者を中心に回っていないと気が済まないアホっぷりなので、せいぜいどこかに閉じ込められていてほしいものです。  翼男はかすり傷すら負っているようには見えませんでしたし。  あまりに国王陛下が気の毒なので、私がラオベルグラッド王国に協力支援していたという体裁を整えて差し上げることにしました。  実際に私は国王陛下とお父様の許可を得てレオと一緒に探検していましたし、あとからディルクも合流していて実際にギルドで正式にパーティーを組んでいるので、問題はありません。    ちなみに副騎士団長やスーメリアたちは平原に埋まっていたので救助してあげました。  副騎士団長のことだけは気にしていたので、助けられて良かったです。  とても感謝してくださいました。  しかし、スーメリアは私に気付くと口汚く罵ってきたのでラオベルグラッド王国の人たちがつい殴り飛ばしてしまいました。もちろん、侯爵がどうだとか言い出しましたが、アホ勇者と一緒に謹慎させられているので問題はありません。そのうち2人ともどこかに飛ばされるのではないでしょうか?  まさか私を追放した時にこのような未来を思い描くことはなかったでしょうね。  私も、案外追放はショックだったのですが、その後のダメすぎる行動に嫌気がさしてしまいまして、今ではなんの感慨もないです。  教訓としては、いかなるときも状況把握や冷静な整理分析が重要ですし、場合によっては誰かに助力を願うことも大切なことです。  私が精霊に願ったり、レオがギルドに……そして私に助力を頼まなかったら、こんな風にあっさりとこの大陸の人々が平和を手にすることなどできませんでしたから。  もう私とアホ勇者の未来が交わることはないでしょうから、私もこれでアホ勇者について話すのはやめにします。  最後の言葉だけは優しく丁寧に、さようなら……  なんて言う訳ありませんわね。    贈る言葉は1つです。  最後ですから全力で叫びますよ?  今後は勇者様を見かけても『あ~勇者様ね……はいはい』としか思わなくて済むように、思いっきり吐き出しますよ?    いいですね?    もしよろしければ、みなさんにもご唱和いただけたらと思います。  あのアホ勇者へ向けて。  行きますよ?  一回だけですからね!  もう二度と言いませんからね!  せ~のっ!!!  ”ざまぁ!!!!!!!!!!!!”  お耳汚しでしたら失礼しました。  一度だけ言いたかったのです。  これからは『魔王の魔力の残滓』を追います。  こんな私に対して、美しい月が浮かぶ爽やかな夜に景色の良い丘の上で求婚してくれたレオメルド。  とても幸せな気分でいっぱいでした。    それでも、申し訳ないですが、あれを残しては私の旅は終わらないと感じています。  婚約ということで納得してもらい、再び旅に出たいと思います。
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