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今、話題の有名な彼が、うちの旅館を手掛けてくれれば、それは確かにすごい宣伝効果だ。そして、さらにこの旅館の価値が上がり、箔がつく、そう父は口にしていた。その時はもう決定事項のように話していた父を思い出す。
「今一番有名な向井先生だからですよ。もちろん報酬はお望みのままに」
いきなりお金の話をする父に、彼の芸術をそんな風に言うなんて。損得だけでしか動かない父らしい。非難めいた思いがよぎるが、もちろん口にできるわけもない。
返事をしない彼に、父は雰囲気を変えようとしたのかパンと手を叩いた。
「瑠菜、先生にお茶を」
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