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ふすまの向こうで待機していた私に、案の定想像通りの声が聞こえた。瑠菜というのは私の異母妹で、この辺りでも評判の美人で父の自慢の娘だ。反面、私といえば26歳になった今まで、男性経験もなく魅力もない。身長159㎝、体形も一般的でどこにでもいるような人間だ。私もこの家で働いていることもあり、常に和服を着ていることが多く、今日も薄い紫の訪問着を着ている。妹と私は母親が違うせいか、まったく似ていない。
瑠菜ならばきっと先生の機嫌を取れると思ったのだろうが、今朝から瑠菜の姿が見えないため、私がここにいたのだ。仕方なく部屋に入り、角にある茶を点てる場所へと向かう。
「菜々子!! どうしてお前が。瑠菜はどうした?」
姿を見せた私に、父の怒声が飛ぶ。私にそんなことを言われてもどうしようもできない。
そう思うが、そんな反論をしても仕方がない。
しかし、父は瑠菜が茶を点てると思ったのだろうか。小さいころから茶道や華道の先生から逃げてばかりいたのに。
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