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「先生にとっても私どもとの縁は邪魔になるようなものではないと思うのですが」
確かに我が家は旧家で全国的にも知名度が高い、彼にとってもメリットはあるかもしれない。
「それで?」
きっぱりと言い放った彼に、私は驚いて視線を上げた。
そんな答えが返ってくるなど、想像していなかったのか、父は啞然とした表情をした後立ち上がった。
「どうしてですか! 菜々子! やっぱりお前なんかが先生の前に現れたから!」
また始まった。そう思ったがもう遅い。何かあるとすぐに他人に罪を擦り付けるところがある父。そして、嫌っている前妻の子である私はその恰好の的だ。
瑠菜がここにいれば、彼がOKしたというのだろうか。
「先生、そんなことを言わずうちの娘をぜひ向井家の嫁に」
つい、本音がでてしまったようで、しまったと父が口元を押さえる。
仕事はもちろん財政界にかなりの権力を持つ、向井家とパイプが欲しいのだと私は悟る。
しかし、瑠菜がそれを了承しなかったのだろう。この見合いが嫌で逃げたのだと理解する。
そんな時だった。
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