知らないのは君の方

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「わたし、謝らないといけないことがある」 2人でチョコケーキを作っていると、彩葉がいきなり言った。 南雲のことか? この状況で「謝りたいこと」って言ったら、南雲だよな? 「気にしない。いや、気にならないわけじゃないけど、いい。大丈夫」 「何を言っても怒らない?」 「もう済んだことなんだろ? だったらいい」 全部、俺がぐずぐずしてたせいなんだから。 「あのね、キス……初めてじゃない」 「ああ……うん」 「中学の時……」 「そんな昔の話? 相手、南雲じゃないってこと?」 「ずっと南雲くんのこと気にしてるけど、どうして?」 「南雲に……告られたろ? それで彩葉も――」 「そんなことあるわけない。『好き』って言われたけど、わたしは、俊ちゃんが好きだから」 「だったら誰と?」 「中学の時、毎日遅くまで一緒に受験勉強してたでしょ? その時、俊ちゃん寝ちゃったことがあって。それで……寝てる俊ちゃんに……ちゅーしたの。ごめんなさい」 「あれなら起きてたから知ってる」 「え……」 「嬉しかったから、次の日、母さんがおやつに持って来たケーキ、彩葉に大きい方やったじゃん」 「そんなの知らない……今日は、わたしの知ってる俊ちゃんじゃないみたい」 「嫌?」 「嫌じゃない」 「彩葉、可愛い」 彩葉が、恥ずかしそうに笑うのを見て、俺も笑った。 彩葉がこんなに嬉しそうな顔をするだけで、世界が変わった。 もっと早く言えばよかった。 だからこれからは何度でも言うよ。 大好きだって。 04aa9346-4111-467f-8298-319d4d27c10b
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